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2015/05/14

母親には自分を守ってくれる力強い大人の男が必要だったのだ。



タケシは軽トラに戻ると、いかつい男からもらったご祝儀をダッシュボードに突っ込んだ。
妙な言葉遣いをしなかったか。俺はうまくやれたのかなと、今になって脇汗が吹き出してきた。

(まあ、なるようにしかならねえしな。)
(怒られなかったんだから大丈夫だろう。)

タケシは親分さんの家から軽トラを出しリカコと待ち合わせの津田沼へと向かった。
リカコとの待ち合わせは23時だったので、まだ全然余裕だ。
夕焼けの中、市道をのんびりと走っていたタケシは、道沿いの先にデニーズの看板を見つけた。
一仕事終えた感でくたくただったタケシは、ハンドルを切って車をデニーズの駐車場に滑り込ませた。
荷台に結びつけたジェットスキーのロープの張りを確認して、タケシはデニーズに入って行った。

オムライス。

リカコとの待ち合わせまでにはまだ随分ある。軽く食事をすませておこうとタケシは注文した。
「デニーズは、やっぱりオムライスだよな」独り言をつぶやいてタケシは一人笑った。
オーダーを取りに来たパートは一瞬怪訝そうな顔を見せたが、かしこまりましたと注文を通しに下がっていった。

子供の頃、親父と一緒にデニーズに来たよなあ。

タケシの父親は肉体労働者で川崎の工場に通っていた。
タケシとはよくキャッチボールをして遊んでくれた。今で言う子煩悩な親だった。
キャッチボールが終わればデニーズだ。

「お前玉投げるの早くなったなあ」
「うん」
「よし。何でも食え。アイスか?ジュースか?」
「なんでもいい?」
「おお。何食いたい。」
「オムライス!」
「腹減ったのか。」
「うん。」
「そうか。よし大きくなれ。ねえさん、オムライスな。」

こんな時の父親は上機嫌だった。
自分はビールを飲みながら、タケシがオムライスを食べるのを目を細めて見ているのだった。
二人の話題は大抵野球で、ベイスターズの選手の一人ひとりについて語り合った。

そんなタケシの父親はタケシが10歳の時に亡くなった。
交通事故だった。

保険だか年金だか慰謝料だかで生活は苦しくなかったはずだが、母親が塞ぎ込んでしまった。
そんな母親を勇気付けようとタケシ少年は家事を手伝い、勤めて明るく振舞った。
数年で母親も明るさを取り戻したが、それはタケシの功ではなく、タケシの知らない大人の男のおかげのようだった。
母親はなにか綺麗におめかしして出かけるようになり、15のタケシにもなんとなくそれは分かった。
母親はタケシを気にしてか男と籍を入れることはなかったが、タケシには気に食わなかった。
タケシは荒れて学校でも大暴れし、いつしか暗い世界にも出入りするようになって行った。

(ちぇ。暗いこと思い出しちまったな。)

今ではタケシにも母親の気持ちが分かるようになり、普通に接することができるようになっている。
母親には自分を守ってくれる力強い大人の男が必要だったのだ。

(俺が子供だったんだ。大人の男になりゃいいんだよな。)

タケシは運ばれてきたオムライスにスプーンを刺し、大きな口でぱくついた。
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