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2016/10/25

「線虫」医師の見立ての回(4)臨時カンファレンス



9時、第2会議室。
第2会議室は江波が詰める棟の6階にある真っ白なだだっぴろい部屋だ。羽月教授が乗り込んできた8時30分からは幾何の時間もなく、とにかく昨日の新谷の検診結果をできるだけ医療システムの自分のアカウントに集め、時間ぎりぎりに江波と木谷が第2会議室に入室した時には、羽月教授の集めた関係者が全員集合していた。
すなわち泌尿器科が専門の羽月教授と飯田先生、循環器内科が専門の西村先生、そして遅れてやってきた脳神経外科の江波とインターンの木谷女史の計5人だ。
既に会議室正面の大スクリーンには、泌尿器科に送られたのであろう新谷の下半身のMRIが映されており、二人が入る直前まで大きな声で議論が繰り広げられていたようだった。

遅くなりましてすみません。
はいはい。待ってましたよ。そこに座りなさい。

江波が遠慮気味に言うと上機嫌に羽月教授が請け負った。既に到着していた3人はコの字型に配置された席の向こう正面に座っており、二人が指示されたのは手前側前方の席だった。両者の間に多少の距離がある。これは尋問だなと江波は思った。だが教授に対しては抗うすべもなく、江波と木谷は促されるがままに指定された席に座った。

さて、先生諸君は顔なじみなので紹介の必要はないでしょう。こちらのお嬢さんは、昨日1日患者さんに付いていた方だそうです。色々と質問をするためにお呼びしました。
インターンの木谷です。ヨロシクお願いします。

羽月教授の軽妙な司会で即席のカンファレンスが始まった。こうした場所への出席など初めての木谷だが、緊張してヨロシクの部分の声が裏返った。江波は木谷の脇を肘で突き、少しでも緊張をときほぐそうとした。

では早速、患者さんの基礎データについて詰めていきたいと思います。江波先生、お願いします。

羽月教授は自分の仕切りでカンファレンスを進めたいようだが、江波はその前になぜ呼ばれたのかを知りたかった。自分が当事者なのに、相手ばかりがカードを握っていて、当事者の自分が何も知らないというのは不利だし、流れとしても面白くない。

江波です。お集まり頂きありがとうございます。と言っても私はなぜここに呼ばれたのか。何が問題なのかが実は分かっておりません。それほど大きな話でもなく、たぶん、病院に紹介した私の友人が薬物依存であったという結論であると思いますが。
薬物依存かどうかは我々が決めるよ。なので江波先生はあなた名義で取ることのできた、患者の検診結果を我々に教えてくれれば良いです。

循環器内科の西村が語気強く反応した。面識はあるが西村は腰ぎんちゃくであまり好きなタイプではない。江波は西村の意見を無視し、羽月教授に向かって問いかけた。

羽月教授、これは査問委員会ですか? 私は知人に病院を紹介しただけで、私自身が倫理的に問題のある行動をしたわけではありません。皆さんが興奮して私から情報を得ようとしている。これでは説明せよと言われましても、私も納得がいきません。
そうですね。西村先生、言い方に気を付けてください。江波先生を責める集まりではありません。江波先生。事情をお話ししましょう。昨日、江波先生が飯田に回してくださったMRIに我々は奇妙なものを見つけたのです。それはこれまでに見たことのないもので、実際、私たちも判断に困っています。それで江波先生には予断を与えずにフラットな目でデータを解説して頂きたいと考えています。もちろん、最終的にはMRIをお渡ししますし、我々とともに結論を考えて頂きたいと願っています。どうでしょう。これで納得していただけませんか。

羽月教授の説明は理にかなっている。また西村からも一本取ったことで江波は納得した。

分かりました。では私なりの意見で、問診やあまり関係のなさそうなデータは省かせて頂きます。脳神経外科医として専門の脳のMRIからお見せしましょう。

江波は机に設置されたPCから医療システムを立ち上げ、まずは自分のアカウントにログインした。脳のMRI画像を表示したところで机のボタンを押し、大スクリーンへの投影に切り替えた。

ではこちらのMRI画像に基づき所見を述べさせていただきます。患者の前頭部の大脳皮質に注目ください。ここの部分ですね。この前頭部の大脳皮質に萎縮が見られます。そのため脳室が大きく見え・・・あれ、この角度からだと前頭部に限らず大脳皮質自体かなり縮んで見えますね。うーん、そうなると有機溶剤またはアルコール、長期に渡るもしくはかなり強烈な薬物使用などの兆候と捉えるべきかもしれません。

(これでは論理的な思考も徐々に難しくなる。そうか、あいつが野生化して、木谷君を襲ったのもそういう事情があるのかもしれない。)

・・・あるいは睡眠不足でも一時的には縮小しますが、このレベルになると人として冷静な判断が難しくなるかもしれませんね。それと、あっ、、、あと内側で目立つところでは、視索前核と背内側核が、通常のレベルを超えて大きくなっています。これは、ともに性欲や勃起に関与する部分ですが、後者は空腹中枢とも呼ばれています。

(そうだ。新谷は勃起が止まらないと言っていた。そう考えると、あいつ、脳の病気だったのか。)
 
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